自分の手の力を探り、引き出すための自然な方法
子供達に自分の手の力を探り、自然に引き出すための機会を与えてあげるのは良いことです。具体的に言うと、左手と右手を連携して用い、自分の手を「使いこなせる」ようになっていくためのお膳立てをしてあげるわけです。次のような実例の中から、あなたにとってヒントになるようなものが見つかるのではないかと思います。
自分の利き手、利き手でないほうの手を意識するようになるための活動
- 子供に線引き、紙、鉛筆をあげます。そうすると自然に、利き手でないほうの手で線引きを押さえ、利き手で鉛筆を持つことになります。
- 子供に物差しと紙を渡し、まっすぐな線を引いてご覧と言ってみましょう。子供の意のままに、わけのわからない形を描かせても良いですし、「ライオンの檻を描いてご覧」(そうすると子供は縦線を沢山引くことになります)とか、「はしごを描いてご覧」(そうすると横線をいっぱい引くことになります)と言ってみても良いでしょう。
- 定規で線を引くのを、机の上ででなく、黒板やホワイトボードの上でやらせてみましょう。そして大きな定規を使います。黒板やホワイトボードなどの鉛直面で、とてもちびた白墨を使うと、自然に手首が伸ばされ、三つ指での持ち方にもなりやすくなります。
- 大きなボルトやナットの入った箱を子供に与えます。そしてボルトにナットをはめさせてみましょう。
- 違った種類の色々な蓋付きの瓶を取って置きます。そして蓋を外してばらばらにし、一緒くたに大きな箱に入れます。子供にどれとどれが合うか見つけさせ、はめさせましょう。こういうことをしているときに見ていると、どっちが利き手なのか分かります。蓋を持っているほうの手が利き手です。
- 子供に15枚から20枚くらいの、平らな札かチップのようなものをあげます。子供に目隠しをして、札を積み重ねるように言って御覧なさい。そうすると利き手でないほうの手が、うまく積み重なっているかどうかを触れて感じるのをあなたは見ることになります。利き手でないほうの手が目の代わりをするのです。
手の力を強くするための活動
- 何かの小さな容器でも手頃な大きさのおもちゃでも何でも、手で「つかめるもの」を色々と用意します。そうしたものの中に、スポンジのボール、小麦粉やお米の入った風船、その他どんなものでも、押すと押し返してくるような、弾力のあるものを含めてください。
- 穴あけ器を数種類と、厚さや紙質の違う、様々な色の紙を子供にあげます。
- 洗濯ばさみを用意します。力が要るような、通常のばね式洗濯ばさみです。もし入手できれば、普通のプラスチックの物より木製の物がいいでしょう。そして洗濯ばさみの片方に親指を置き、もう片方に人差し指と中指を置いてつまむように教えましょう(これは丁度三つ指式での鉛筆の持ち方になります)。さてここで大人が、洗濯ばさみの一つ一つにカタカナを書きます。そして靴の入っていた箱の蓋を取り去って、ふちのぐるりにもカタカナを書きます。そして子供に、箱のふちに書いてあるカタカナのところに、同じカタカナの洗濯はさみを留めさせます。カタカナの代わりに数字でもひらがなでもアルファベットでもいいでしょう。また子供に、洗濯はさみで小さな物体をつまませてみるのも良いでしょう。お勧めなのは、スポンジを切って、一辺1センチくらいのさいころ状のものを幾つか作ることです。そしてこれにも、例えばカタカナなどをマーカーで書いてください。そうして子供に、洗濯ばさみにあるのと同じ字のスポンジをつまむように言うわけです。洗濯ばさみを三つ指式でつまんでいないのに気付いたら直してあげましょう。
手の巧みな動きを引き出す活動
- 金モール、銀モール、その他各種のギンプ[レース地に模様を浮き立たせる糸。ラメなど光る素材が多い]を用意します。また他方では色々な太さのストローを用意します。飲むためと言うよりはかき混ぜるために使うような、非常に細いストローも用意してください。子供の利き手でないほうの手にストローを持たせます。利き手の親指と人差し指で金モールをつまませ、ストローの中へと入れてゆきます。反対側から出てくるまでです。
- 普通のピンセットで、小さな物体を摘み上げたり、所定の位置に置いたりさせてみましょう。ピンセットを持つときも三つ指方式で持ちましょう。つまり親指を一方の側に、人差し指と中指をもう一方の側に置くのです。穴あけ器を使った活動と組み合わせてみるのも面白いでしょう。穴あけ器で紙に穴を開けたときに出来る小さな丸い紙を、ピンセットで摘み上げるのです。小さな丸を別な紙に沢山貼り付けて、模様を作ったり、絵にしてみましょう。何かピンセットを使った、科学実験のような作業を考案すると、子供達は喜ぶでしょう。
- スポイトを幾つかと、小さな容器を幾つか用意します。容器の中には色々と違った色の色水を入れます(色水は絵の具を水に溶かして作ります)。子供にスポイトの頭を、親指、人差し指、中指で持たせましょう。そうしてコーヒーフィルターやペーパータオルの上に一滴ずつ垂らすように言います。とても小さな容器、例えば飲み薬の量を決めるための小さなキャップのようなものを用意して、それにスポイトで一滴ずつ垂らさせ、何滴で一杯になるかを確かめさせるのも良いでしょう。
- 子供に正しい仕方ではさみを持つよう促しましょう。二つの輪の中に、親指と中指が入るようにします。第一関節を越えては入り込まないようにします。そして人差し指ははさみを下から支えるような格好になります。人差し指が支えるお陰で、はさみが縦向きに保たれ、斜めにならないのです。はさみの二つの輪が等しい大きさで、どちらも小さいとき、以上のような持ち方が一番保ちやすくなります。もし一方の輪が大きいと、そこへ人差し指と中指の両方が入り込んでしまいます。さて、正しい持ち方においては、切っている際、親指、人差し指、中指は良く動く状態にある必要があります。また薬指と小指は、動いてはいないけれども、いつでも動ける状態にある必要があります。手の別々な部分が違った動きをする能力を引き出すために、切ることは子供達にとって良い活動です。これは高次元の能力なのです。これは、親指、人差し指、中指に高次元な技能をさせる間、薬指と中指にははさみを支える仕事をさせるか、休ませて置くという芸当です。子供が三つ指方式で筆記具を持つことに良く習熟した場合においても、手の別々な部分が違った働きをしています。
字を書く前のウォーミングアップ
字を書く練習をする前や、字を書くような作業をする前には、次に掲げたものの内、少なくとも3種類をやってみてください。そしていつも、「いすを引っ張りよせて、煉瓦を積み上げる」のがウォーミングアップの最後に来るようにしましょう。
- 教室で子供達を机の横に立たせます。腕を伸ばし、前回しを10回します。次に、後回しを10回します。
- 立ったままで、腕をまっすぐ上に上げます。そして車のワイパーのように、両腕を交差させます。これを10回やります。次に、自分に近かったほうの腕を近くに、遠かったほうの腕を近くにして、ワイパーのような運動を10回します。
- 立ったままで、胸の前で両手のひらを合わせます。そして両方からありったけの力で押します。20数えるまでの間やります。
- 立ったまま、両手を胸の前に持ってきます。そして一方の手は親指が下に向くように、もう一方の手は親指が上に向くようにします。そして親指以外の指は曲げます。こうして鉤のようになった指をお互いに引っ掛けます。固く引っ掛けたままの状態で両横に引っ張ります。20数え終わるまで引っ張りつづけます。
- 机の上に手を広げて置きます。肘をまっすぐにします。そして力いっぱい机を押します。人によっては自分の体をかすかに持ち上げることが出来るでしょう。そのために足がわずかに床を離れるでしょう。これを10回やります。
- 立ったままで、または座って、親指の腹を人差し指の腹に押し付け、次に中指の腹に押し付け、薬指、小指の腹に押し付けます。これを5回繰り返します。これは手を耳の横に持っていってやります。そうすると子供達は、目に頼るのではなく、自分の体の中から来る刺激、自分の運動感覚に頼るようになるからです。
- 立ったままで、または座って、親指の腹を人差し指と中指の腹に当てます。指を伸ばすと、親指と人差し指の間がアーモンドのような形になります。これを『猫の目』と呼びましょう。指の腹同士はくっつけたままで、今度は指を引きこみます。そうすると指と指の間はまん丸になります。これを『ふくろうの目』と呼びましょう。猫の目にしたり、ふくろうの目にしたりを10回繰り返します。
- これは座ってからやります。子供達それぞれに一握りのレーズンとか、ミニサイズのマシュマロをあげます。子供達に、親指、人差し指、中指の腹だけを使って、レーズンやマシュマロを一個つまみ上げるように言います。一個をつまみあげたら、それを今度は手の中の、薬指と小指に近いほうへとずらしていって、そこへ蓄えます。そうしたら2個目を摘み上げ、同じようにしてずらしていき、蓄えます。これを繰り返して5個を蓄えたら、今度は一個を指先に戻し、机の上に置きます。そして2個目、3個目・・・と、すべてを机に戻し終わったら、食べてよし、ということになります。硬貨などを使っても同じような作業が出来ます。
- 最初に座ったときには、「いす押し」を10回しましょう。手を両腿の横、いすの上に置いて、肘を伸ばし、お尻を少しだけいすの上に持ち上げます。
- いすを机のほうに引っ張り寄せましょう。机と自分のおなかの間に、手のひらがようやく通るくらいになるまで引っ張り寄せます。自分の体は、実は煉瓦が積み重なって出来ていて、それは注意深くまっすぐに積み上げなくてはいけないのだ、と想像させて見ましょう。腰のあたりを作っている煉瓦はいすの背にぴったりとくっつき、背中を形作っている煉瓦は垂直に積みあがり、足も膝の真下にある、というわけです。こういう位置関係のイメージが子供達の中にしっかりと出来上がると、教師はただ「煉瓦を積み上げなさい」と言うだけでその姿勢をとらせることが出来ます。