手で書くということの背後にあ るもの

広く行き渡った指導法の問題点
ここに私が書くことは、字を書 くということの根本に横たわる 物事です。療法士がかかわる範 疇にはないのですが、どうして も付け加えさせていただきたい 点があります。字を書くことが 覚えられるような年齢に達した ら、できるだけ早い段階で適切 な教え方をすると、字を書くこ とは自動的な運動能力になりま す。残念なことに、仮に最も発 達の早い段階で適切に教えられ たにせよ、子供には広く行き渡 った普通の「書き方」というも のが押し付けられ、その指導法 にも一貫性がありません。子供 たちはただ単に手で字を書くと いう技能を2、3年もかけて教 えられ、それに続く1年足らず の間でやっと他のことを習わせ られます。

些細なことに注意を奪わせるな
字を書くことの問題だと思って いても、実際には注意力にかか わる問題だという場合が多くあ ります。子供としては一生懸命 に全注意力を書くことに集中し ようとしているのに、うまく書 けない、というような場合は特 にそうです。字を書くというこ との目的とは直接関係ない、「 正確にこう書きなさい」という ような些細な問題に子供たちの 注意力が奪われてしまうと、子 供たちの字を書くという能力は だめになってしまうのです。そ ういう子供たちは怠けているの ではないと思います。ただ負担 が大きすぎるのです。こういう 場合は、子供たちが書くことを 良い習慣にし、注意力をそれほ ど向けなくても書けるようにな る、というのが理想です。もっ ともこれには子供たちの側が大 いに忍耐力と意欲を持つという ことが求められるわけですが・ ・・そうなるといいですね!  それと、これは脳の研究で色々 とわかってきたことですが、人 間は、言葉にかかわることをこ なす場合、言葉と無関係なこと をこなすのに比べて、脳の中の 異なった多くの場所を同時に使 っているのです。素敵な絵を描 くのに、字は最悪という子供た ちが大勢います。字を書くとい うことは、かなりの部分言語的 能力なのであって、単に手の細 かな動きということではないの です。ここに、なぜ子供たちの 多くが他のことはすべて一方の 手でやるのに、字だけはもう片 方の手で書くのか、ということ の理由もひそんでいるように思 います。

でも、純然たる字を書くことの 問題というよりも、運動能力や 視覚上の問題もあるのかどうか 、子供が書いている様子から見 分けるにはどうすればよいので しょうか。

人が作業をこなす過程を見る
私はまず、部屋での子供たちの 観察からはじめます。それと、 正当な根拠のある場合だけです が、より詳しい評価をするため にエアハルト法を用います。療 法士には、何か特定のことをこ なそうとしている人を観察する ことによって、それを首尾よく こなせないのにはどこに原因が あるのかを見つけ出す能力があ り、これが療法士の強みのひと つです。字の下手な人すべてが 療法士の介在を必要とするとい うわけではありません。人が何 かをこなそうとしているところ を解析することにより、療法士 は過程に焦点を当てていきます 。現実の状況に即し、目的にた どり着く方法を見出すことが鍵 になります。

子供による5種類の作業を分析 することの効用
それから私は、近い写し取り、 遠い写し取り、朗読、自由作文 、目を閉じて文字を書くことの 5種類を、各1分ずつやっても らい、評価すると、一般尺度化 されるものではないにしても、 非常に豊かな内容の情報が得ら れることを発見しました。実際 には何が起きているかについて 可能性を考え、仮説を立てた上 で、こうした情報を見ていくと 、いろいろなことが分かります 。たとえば自由作文では抜きん 出ていてうまくやる子供たちで すが、目が関与する技能に何か 問題があるようで、写し取りの ような作業がとても遅い、とい うような場合があります。そう した子供たちには目を閉じて字 を書くことをやってもらいます 。自由作文がとても遅いような 子供たちの場合は、私はまずそ れは言語処理上の問題なのか、 表現能力に関するものなのか、 あるいは統合の問題なのかを考 えます。こんな子供たちの場合 、「視覚的に思い浮かべて、言 葉にする・・・頭の中でテレビ をする」取り組みをすると、う まくできるようになることがあ ります。私はこれを全般的な統 合や運動計画に問題を抱えてい る場合にも適用することがあり ます。以上のような分析を、遠 い写し取りに問題がある場合に ついても行い、さらに他の作業 についても同様な分析

色々なことが役に立つ
以上のような思いつきに統計的 な根拠を与える上で、ビーリー 試験の結果を用いることは非常 に有益でした。またベンボウ検 査の結果手に物を持った運動が あらゆる側面において優れてい るということが分かった場合は 、運動性の原因が関与している 可能性は小さくなります。実に 色々なことから、重要な情報が 得られるのです。